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休職期間を半ば投げやりな状態で、感情の赴くままにパチンコ・パチスロ三昧であった私にも、いよいよその時が近づいていた。
休職期間の満了である。
休職前に心療内科で診断された病名は「うつ病」であった。
確かに、その時は心療内科の医師が診ても「うつ状態」であったのかもしれない。
しかし、その根本的な問題はギャンブル依存症という病理であったのだから、この期間、通院しようが処方箋を飲もうが、問題解決には至らなかった。
職場内でのパワハラという問題から遠ざかったことにより、精神的には楽にはなったが、明らかにこの休職期間でやるべき選択は間違っていたのだ。
パチンコ・パチスロに昼夜を問わず没頭する現実的逃避の日々は、ギャンブル依存症を悪化させ、パチンコ・パチスロが一時的な快楽をもたらすと同時に、そのユーザーに憑りつく「負け癖」も深刻化していった。
パチンコ・パチスロはギャンブルであり、言うまでもなく胴元のパチンコホールが儲かる仕組みになっている。
パチプロやスロプロでないほとんどの一般ユーザーは、トータルで負けるのは当然のことだ。
多くのユーザーもその事は頭では理解している。
本来は、月に一度程度で余裕のある資金の中で遊ぶギャンブルなのだろう。
しかし、その理性を壊すほどの考え抜かれたギャンブルがパチンコ・パチスロだと言っても過言ではない。
普通にパチンコ・パチスロを打っていれば高い確率で負ける。
それでも、後先を考えず借金を重ねたり、犯罪までも犯すまでパチンコ・パチスロを打てしまう人がいる位の仕組みになっているのだ。
ギャンブル依存症対策基本法にもあるように、「経済破綻、生活破綻、犯罪」と密接に関係しているというのが真実の姿である。
そして、「負け癖」というのは、負けることに慣れてしまう状態のことだ。
普通に生活をしていれば、人生において「勝つ」ことの方が多い。
仕事に行くために疲れた体に鞭を打ち朝に起きる。
調子が良い時も悪い時も含め、仕事をやりきる。
気の合わない職場での人間関係でも折り合いをつけていく。
彼女や奥さんや子供に気遣いをしてあげる。
どれも、ごく当たり前の事であるが、結局は自分自身の心に勝つか負けるかという勝負においては、多かれ少なかれ「勝ち」を積み重ねている。
地道に愚直に進んでいる人が平凡に見えても、最後は幸福感に満ち溢れているのは、きっとそういう事なのだと感じている。
しかし、パチンコ・パチスロなどのギャンブルによる「負け」は、本来の日常では得る必要のない「負け」なのだ。
これは、金銭に限ったことではない。
人生という限られた寿命の中で割り当てる時間においても大きな損失、即ち「負け」を背負うことにもなる。
その時間で人間関係をどれだけ広げられたか
その時間で家族との時間をどれだけ過ごせたか
その時間でスキルアップのためにどれだけ勉強できたか
後々に気付いた時には、気にも留めなかった「負け」が自分自身に大きくのしかかる。
そして、パチンコ・パチスロ遊技人口の3人に1人以上が罹患しているギャンブル依存症になってしまった日には、「負け癖」は深刻化する。
パチンコホールに行くために家族にまで嘘をつく
パチンコホールに行くために借金をする
パチンコホールに行くために仕事を失う
パチンコホールに行くために犯罪を犯してしまう・・・
ついには、その負け癖によって自らの命を断ってしまう人間までいるのだ。
私は、どうにか犯罪を犯したり、自らの命を断つまでには至らなかったが、その段階に行く可能性は十分あったと自覚している。
後一歩間違えればという所で私が救われたのは、不妊治療をしていた妻に子供ができたことだった。
結婚してからなかなか授らなかった我が子だった。
その時の妻のどこか緊張していて嬉しそうな声は今でも耳朶から離れない。
私のようなギャンブル依存症者と結婚してしまったが故に、「共依存」という言葉があるように多くの苦しみを抱えていた妻でもあった。
ようやく彼女が望んでいた一縷の望みが見え始めた。
私は、全てをやり直すためにようやく復職をする気持ちになった。
そこから我が子のために生きるはずだった・・・。
しかし、如何なる理由があったとしても、自分自身に負け続けたギャンブル依存症者の私が社会に戻った先に見た光景は予想だにしないものだった。
【ギャンブル依存症体験記第1話は↓から】
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