緊張の糸が切れる瞬間【ギャンブル依存症体験記 第14話】

https://ganbulingaddiction.com/2021/07/21/story14/依存症体験記

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『ぱちんこ・パチスロは適度に楽しむ遊びです』

こんな表記を目にすると今でも怒りがこみ上げてきます。
どこが「遊び」なのだと。

適度に遊ぼうとしても、午前中に5万も必要な機械構成の時点で遊びの範疇を既に越えています

そして、『自己責任ですから…。』と最後は突き放す言葉…。

これほどの依存度の高い賭博を365日、全国どこでもやれる制度を野放しにしている国政は悪だ。

今のパチンコ・パチスロを適度に遊んでいる人々がどれだけいるのでしょうか?

多くの人間が財産を減らし、借金をし、大切な人達を裏切り、傷つけ、止めたくても止められない泥沼にはまっている事実になぜ目を向けないのでしょうか?

年間自殺者2万数千人のうち、7割以上の人が病気の苦しみと経済苦を原因としています。
政府は、自殺原因で最も多い「病気の悩み」「経済の悩み」をさらに掘り下げ、そこに至るまでの「きっかけ」を調査してもらいたいと思うのです。

パチンコ・パチスロからうつ病になる人間もいる。
パチンコ・パチスロから経済苦になる人間もいる。
パチンコ・パチスロが起因となり、どれだけの人間が命を落としたのだろうと思うのです。

そして、年間行方不明者は毎年10万人。

パチンコ・パチスロが起因とした苦しみから、どれだけの人々が行方を眩ましただろう。

これは飛躍ではないと考えるのです。

このれっきとした賭博を廃絶しなければ、日本の未来を潰すことになるとさえ思うのです。

私は営業職に戻ると、取得した資格を活かしながら仕事に専念しました。

仕事中にパチンコ・パチスロはやらなくなり、仕事終わりにパチンコ屋に行くこともなくなりました。

「もともとパワハラをしてきた上司に屈してたまるか」という怒りが原動力となり、自身を律することができたのです。

仕事中にパチンコ・パチスロを誘ってきた友人も、私が異動している間に転職し、パチンコ・パチスロを止め、教員になっていました。

しかし、多額の借金は残っており、毎月の返済には苦しんでいました。
冷静になって借金の数字に向き合うと、本当に自分の愚かさに気づかされました。

1年が過ぎ、2年が過ぎ、仕事も順調で、上司との関係も良好ではなくとも、仕事上では上司の指示に忠実に応えていました。

そんな時、私に嫌がらせをしていた先輩が倒れたのです。

人にやったことは、善い事も悪い事も必ず自身に帰ってくるというのは、本当だと思います。

先輩が倒れた事によって、様々な重要な仕事が全て私にまわってきました。

私は、ただひたすた修羅の形相で働きました。
自分のキャパはとうに越え、敵対する上司からは何のアドバイスもフォローもない状況で、私を気遣い仕事を教えてくれる人は社長だけ。

弱音を吐く事も出来ず、助けを借りる人もいませんでした。

緊張と憤怒と怒濤の日々が続いたある日の事です…。

その日は、徹夜で仕事をして、サウナに泊まったのですが、あくる日、サウナから外に出ると、空が灰色に感じたのです。
今までに見たことの無いような空の色でした。

歩いて駅に向かう途中、決して賑やかな雰囲気でもなければ、綺麗な外観でもない一軒のパチンコ屋がひっそりと開店していました。
数十人ほどの客がパチンコ屋の外に並んでいたと記憶しています。

私の疲れきった体は、自然と店内に吸い込まれていくようでした。

何も考えていない思考停止状態で、あれほど距離を置いていたのに、私はパチンコ屋に入ったのです。

サンドに1万円札を入れると、玉が自然と流れてきて、ハンドルを回すと、カチカチと玉が打ち出されていく…。
その時には何の感情もありません。

しかし、その後に襲ってきた感情は敗北感そのものでした。

ギャンブル依存症にひれ伏したような敗北感です。

呆然と打ち出されていく玉を眺めながら、緊張の糸が切れる音が確かに聞こえました。

「もういい…」

この日は3万円ほど使い一度も当たりを引かなかった事を覚えています。
それなのに、不思議と胸に安堵感のようなものが去来したのです。

それは、説明を仕様がない理解不能な感情であり、廃人になりゆく自身にギャンブルの魔王が与えた魅惑なのかもしれません。

その後、私は今までの我慢が破裂するようにパチンコ・パチスロに溺れていくのです。

返済した借金をもう一度借り、
借入限度額が満額になると、クレジットカードのキャッシング枠で借金をする事もありました。
翌月、19万円の一時払いなどもあり、生活はみるみるうちに無残なものへとなりました。

ギャンブル依存症者は、どんな状況でも金を揃える悪知恵がなぜか働くのです。
その最終手段が法律に触れる犯罪なのだと思います…。

依存症体験記
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