パチンコ・パチスロによる社会的損失【ギャンブル依存症体験記 第44話】

https://ganbulingaddiction.com/2021/12/07/story44/依存症体験記

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【前回の内容はこちら↓】

パチンコ・パチスロは公営ギャンブルと違い、営利目的で運営された「遊技」という位置付だ。

つまり、業界は利益を追求していかないといけない。特に株式を上場している法人は、業績が下がれば株主からの追及もあり、増して営利目的にならざるを得ない。

突き詰めれば、どれだけ顧客に金を使ってもらえるかであり、どれだけ脳を破壊させて依存してもらうかという目的になるのかと思う。

パチンコ・パチスロに規制が入る度に、メーカーは法の穴をかいくぐりユーザーが魅了される機種を開発してきたという話もあるが、例えば、パチスロ4号機時代を経験しているスロパチ生活者の話を聞くと、「パチスロ5号機以降は機械割からして旨味などない」ということである。

つまり、生活をかけてまで、人生をかけてまでパチンコ・パチスロに捧げるほど「旨味」はなく、幸せではないということだ。

私はスロパチで生活できるほど勝った経験がないので「旨味」という感覚は分からないが、大当たり後に「え!?これしか出ないの?」と言葉を失ったことは幾度となくある。私が時の流れと共に感じたことは、出玉云々よりも、効果音や光、振動といったものに違和感を抱いたことである。自分の財産を賭けている状態で、パチンコ・パチスロの音、光、振動、効果音が重なる事によって、より脳へのダメージが大きく、より鮮明にその場面が記憶に焼き付き、そして、よりドーパミンが分泌されるのかと考える。

それは、科学的に依存度が高くなる機種をメーカーは開発しているといっても過言ではない。そこに落としこむ仕組み作りをパチンコ業界は営利目的として行っているのだ。

情報が行き届いた現代において、誰もが理解していることだろうと思うが、普通にパチンコ・パチスロを打って勝ち続けることは皆無であり、一握りのプロだけが、知識と自制心を武器に勝ち続けるようにしかなっていない。

それが分かっていながら、余裕のない財産で目の前にある台を取り敢えず打ってしまうのは、もはやギャンブル依存症の域である。知らず知らずの内に依存症は悪化をする一方でしかない。もう、パチンコ・パチスロで一発逆転することは不可能であり、例え僅かに取り戻したとしても、それ以上に失う物の方が大きいのだ。

ドーパミンの分泌によって感じた快楽は二度と忘れることはない。ギャンブル依存症で本当に恐いことは、他の事で感動できないことだ。人間として、今まで当たり前のことで感動できたことが、そうできなることなのだ。生きている以上、これ以上の苦しみはない。

私はパチンコ業界への恨みというよりも、問題提起を形にしていきたいと思っている。なぜならば、パチンコ・パチスロによって楽しんだ人よりも苦しんだ人の方が明らかに多いからだ。それは、日本国内のパチンコ・パチスロ依存症者320万人、家族を巻き込めば1000万人以上だ。

パチンコ・パチスロをやらない人から見れば関係ない話に思えることかもしれないが、パチンコ・パチスロ依存症は精神疾患であり重篤な病気とされており、うつ病や睡眠障害などを併発している人も多く、そういった医療費は国民の税金から負担されてもいるのだ。

さらに、一時期ニュースなどでも取り上げられ、問題提起されてきた生活保護者によるパチンコ・パチスロ遊技である。この問題も個々の状況によって違いはあるだろう。本当にギャンブル依存症とは別の問題で生活保護となり、僅かな楽しみでパチンコ・パチスロを興じている人も中にはいるのかもしれない。しかし、多くはパチンコ・パチスロが原因で社会復帰できない程のギャンブル依存症に陥り今でも続けている。あるいは、パチンコ・パチスロで稼げなくなった人間が補填として生活保護を受給しているということなのだと理解している。

これもまた、国民の税金が充てられているという事から見ても、「パチンコ・パチスロはやらないから自分には関係ない」という事では済まないと思う。

さらに言えば、一緒に会社で働いている上司や同僚、部下から見えぬ形で損害を与えられている可能性もある。開店前からスーツ姿でパチンコ屋に並ぶサラリーマン。昼からパチンコ屋に入り浸るサラリーマン。職人さんも雨が降れば作業着のままパチンコ店に滞在する。

一概に「仕事をさぼって会社に損害を与えている」までは断定できないものの、そういった人たちはきまって携帯の電話が鳴ると、もの凄い形相で走って店外へ出ていく。そこから察することはご想像にお任せしたいが、これを読んでいる方が会社員ならば、高い確率であたなの傍にもそういった人がいると言いたい。

そして、仕事中にパチンコ店に出入する人間は高い確率でギャンブル依存症になる。いや、もうその時点にギャンブル依存症に罹患している。私が言いたいのは、そういった人たちの習慣を改めさせるように追及しろという事ではなく、それほどパチンコ・パチスロは危険であるという警告なのだ。

どう考えたって、仕事中にやるパチンコ・パチスロなどメリットはなくデメリット、将来ほぼ確定している金銭の取得を自ら放棄してまで目の前のギャンブルをやるリスク。天秤にかけたとしても、その結果は火を見るよりも明らかだ。

厚生労働省は平日の日中にパチンコ店にスーツ姿の客がどれだけいるのか統計をとってもらいたいとも考える。そこから導き出される数字によっては、社会として大きな労働力を損失しているという結果になるかもしれない。

パチンコ・パチスロ依存症の初期段階は、自己で事を解決できることもあるが、中期段階、最終段階になれば他人を巻き込み、ついには社会的責任を背負うことになる。初期段階といっても、もはや自己でコントロール出来ないこともあり、借金や嘘を平常化してしまうので人間性は壊れていく。

借金を背負い、嘘をつき、悩みを抱えた状態では仕事に支障もきたし、その損害は多大なものである。最終段階は、犯罪を犯すことになる。

詐欺、横領、強盗、恐喝、殺人。そして、最後に絶望して自ら命を断ってしまうのだ。私が知りあったギャンブル依存症の人の何人かは自殺未遂をしている。

そこまでしてパチンコ・パチスロをやりたくなる衝動。渇望。

何度でも言う、パチンコ・パチスロは日本で唯一の営利目的の賭博なのだ。

依存症体験記
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