杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。
7月21日(日)の放送テーマは、「正しく知ろう! ギャンブル依存症」。内閣官房 ギャンブル等依存症対策推進本部事務局の名達彩恵(なだち・はなえ)さんをゲストにお迎えして、ギャンブル依存症の実態と、その治療法について伺いました。
◆誰でもなりえる病気「ギャンブル依存症」
パチンコ、競馬、宝くじなど、結果が偶然に左右されるゲームや競技等に対して金銭を賭ける行為を“ギャンブル”と呼びます。本来は、趣味や気晴らしの範囲で楽しむものですが、なかには、ギャンブルにのめり込んでコントロールできない状態「ギャンブル依存症(正式名称:ギャンブル等依存症)」になり、日常生活や社会生活に支障が生じてしまうケースもあります。ギャンブル依存症は、アルコール依存症や薬物依存症などと同じような精神疾患の1つですが、“だらしない性格だから”“親の育て方が悪いから”といった誤解や偏見が根強く、依存症に苦しむ本人ですら、誰にも相談できずに問題がさらに深刻化してしまうことが少なくありません。
◆「ギャンブル依存症」特徴的な症状
ギャンブル依存症の方に見られる特徴的な症状は、以下のものがあります。・ギャンブルで勝ったときの興奮を追い求めて、賭け金の額がどんどん増えてしまう
・負けが続いていても“最終的には勝てる”と確信しており、ギャンブルで負けたお金をギャンブルで取り戻そうとする
・負けたときのことは覚えていないのに、勝ったときのことはよく覚えている
・ギャンブルにハマっていることを隠すために嘘をつく
・ギャンブルを中断したり、中止したりすると、落ち着かなくなったり、イライラしてしまう
名達さんは「こうした症状があるために、貯金を使い果たしてしまったり、友人や家族に借金をしたり、ギャンブルをするために嘘をついてしまったりします。ときには、借金が膨らんで盗みや詐欺などの犯罪行為に手を出してしまい、その結果、失業、貧困、さらには自殺など、深刻な問題を引き起こすことがあります」と話します。
ギャンブルをしたい衝動が抑えられないのは、いくつかの仕組みがあるという仮説があります。その1つが、アルコール依存症や薬物依存症と同じように「報酬系」という脳内の部位に、機能的、構造的な変化が起こるからと考えられています。
ギャンブルに勝って気持ちが良くなると、脳のなかでドーパミンという物質が分泌され、体が“快い”と感じる刺激を得ます。このような刺激が繰り返されると、やがて脳が刺激に慣れてしまい、より強い刺激を求めるようになります。
さらには、脳の理性を司る部分の働きも悪くなると言われていて、「このような変化が脳に起こると、自分がどんなにやめようと思っても、自分の意思でやめることができなくなってしまいます」と言います。
そのほかの原因として、ギャンブルをおこなっているときは、不快な気持ちや苦しさを紛らわすことができるため、ネガティブな感情や気分を変えるためにギャンブルを続けてしまうことも。これも、自分の意思にかかわらず“苦しさからすぐに解放されたい”と脳が司令を出してしまうことが理由です。
2020年の調査によると、ギャンブル依存症の疑いがある人は、成人人口の2.2%で、専門医療機関における新規受診患者数は20~40代が大半で、30代が最も多くなっています。また、ギャンブル依存症になりやすい人の特徴として、名達さんは「ギャンブルをする人は誰でもなりえますが、『若い人、男性、ストレスへの対処がうまくない人、ギャンブルが身近にある環境』などが、なりやすい要因として指摘されています」と解説します。
“一度、脳内に変化が起こると、以前の状態に戻すことは難しい”と言われていますが、ギャンブル依存症の場合、適切な支援を受ければ回復することができると言われています。「住んでいるエリアの精神保健福祉センターや保健所といった専門行政機関に相談する、専門の医療機関を受診するなど、専門家から適切なアドバイスを得ながら回復に向かう方法があります」と名達さん。
ほかにも、依存症の問題を抱えた人や、そのご家族同士でミーティングや情報交換をしながら回復を目指していく“自助グループ”に参加する方法、回復支援施設を利用する方法もあり、「精神保健福祉センターや保健所に相談すれば、自助グループや回復支援施設についても教えてもらうことができます」とのこと。
しかし、依存症は病状や状態を正確に自覚するのが難しいと言われています。明らかに問題がある状態であっても、本人は“やめようと思えばやめられる”“あの人に比べたら大丈夫”“借金さえ解決すれば問題はない”などと考えてしまい、問題と向き合えないケースが少なくありません。
たとえ自覚していたとしても、問題解決に向けての行動に時間がかかるケースが多いです。例えば、身近にギャンブル依存症に悩んでいる人がいたとき、家族をはじめ、周りの人が依存症の当事者に対して、やめられないことを責めてしまったり、約束を破ったことに対して怒ることで当事者を追い詰めしてしまい、そのストレスから、当事者がまたギャンブルに頼ることが多くなってしまうと言われています。
また“借金を肩代わりする”“本人の代わりに会社へ休みの連絡を取る”など、本人が起こした問題を肩代わりするのも大半が逆効果になってしまいます。というのも、手助けをすると、本人が問題の本質に直面するのに時間がかかってしまい、ギャンブルをやめる決断をすることに、ますます時間がかかることも稀ではありません。
改めて名達さんは「ギャンブル依存症の当事者が回復するためには、まず専門の相談機関とつながり、当事者も、家族をはじめとした周囲の人も、ギャンブル依存症について正しい知識を得て対応していくことが大切です」と呼びかけます。まずは周囲の方が専門の機関に相談して、適切なサポートの仕方を知ることから始めましょう。
住んでいるエリアでギャンブル依存症に関する相談窓口を探す場合は、依存症対策全国センターのWebサイトをご覧ください。
番組のエンディングでは杉浦と村上が、今回学んだ「ギャンブル依存症」について復習していきます。まず村上は“正しく知る!”とポイントを挙げ、「ギャンブル依存症を正しく知らないといけないことを学びました」と感じ入ります。続いて杉浦は“ギャンブル依存症は回復できます!”と書き、「ちゃんと依存症を自覚して、自分と向き合うことが大事です」とコメントしました。
tokyo FM プラス(2024年7月22日)
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