あまりにも辛い事件です。
証言に「パチンコ」というフレーズが出てくるという事が被告に色濃く残る記憶なのだと感じます。
パチンコにはまり、愛する我が子を犠牲にしてしまう。
一方で親がパチンコにはまっていて「当たり前の日常」が壊される痛み。
「母親のカレー」が唯一の、その痛みを和らげる大切なものだったのかもしれません。
それが無くなった時、フラッシュバックするパチンコへの怒りが思いも寄らない行動に出てしまったのではないかと感じます。
なぜなら、この大事な局面である証言において、「父と母は必ず毎週日曜日はパチンコへ行き、自分は、お腹を空かせてその帰りを待っていた。パチンコから帰って来ても充実した食事は作ってもらえず、仕事終わりにも料理を作ってくれないことが多かった。」という言葉が出て来ているからです。
被告の父親も自殺しているという事実も、もし、パチンコとの因果関係があるならば猶更なことだと思うのです。
2022年12月14日の石川テレビの報道は以下のとおりです。
2022年8月、石川県加賀市で、母親の顔を拳で殴るなどした上、その傍らに包丁を置いて母親に自殺させたとして、自殺教唆の疑いで男が逮捕された。裁判で明らかとなった事件の動機、それは「おふくろの味」だった。いったい、何が男を犯行に及ばせたのだろうか?
なぜ男は母親を自殺に追い込んでしまったのか?
被告の男: 母親が作ったカレーを食べることを楽しみにしていたが、裏の何の関係もない隣人のおじいさんにおすそ分けしていたことに激高してしまった。 法廷でこのように話した、54歳の被告。いったい、あの日、あの時、何があったのだろうか?法廷で事件の詳細が明らかになった。
法廷で事件の詳細が明らかに…
事件は今年8月、石川県加賀市で発生した。 被告の男は、石川県加賀市塩屋町の住宅で当時78歳の母親の顔を殴るなどの暴行を加え、「はよ死ねや」と、その傍らに包丁を置き自殺に追い込んだとして自殺教唆と暴行の罪に問われている。
11月25日に金沢地方裁判所で開かれた初公判。そこで明らかにされた事件の動機は、「母親のカレー」だった。 冒頭陳述などによると、母親と二人暮らしだった被告の男は、長距離トラックの運転手として勤務していた。このため、家に帰るのは週に1回程度。その度、母親に「ステーキ肉」や「すき焼き肉」、「季節のフルーツ」などを買っていたと言う。
被告の楽しみは「酒」飲み方に問題が…
そんな、被告の楽しみは酒を飲むこと。しかしその酒の飲み方に問題があった。 2022年8月12日。翌日からお盆休みに入る予定だった男は、500ミリリットルの缶ビール12本と、アルコール度数が25度の900ミリリットル入りの芋焼酎、そして母親にステーキ肉を買って帰宅。
この日、夕食に食べたのは母親が作ってくれた手作りのカレーだった。 食事を終えると、男は部屋で缶ビールを1本、入浴中に1本、そして風呂上がりにもう1本飲み就寝したという。それから3日間は、母親と一緒に父親の墓参りに行ったり、家で酒を飲んだりして過ごしたという。
そして事件のあった8月16日。前の日に記憶がなくなるほど酒を飲んだと言う男は、午前6時頃に起床。台所へ向かうとそこにあるはずのものが無いことに気づいた。 それは、母親が作ったカレー。 男は寝ている母親を起こし、なぜカレーがなくなっているのかを尋ねたと言う。それに対する母親の答えが男を激高させ、悲惨な事件へと発展するのだ。
母親: 隣の人におすそ分けした。
被告の男: なんで勝手にやるんや!生き方を正せ!土下座しろ!
母親に怒りをぶつける男。母親はカレーを、隣人にあげてしまったことを謝ったが、それでも男の怒りは収まらなかった。男は拳で母親の顔を殴り、背中、そしてお尻を蹴りつけるなど母親に暴行を加えたと言う。そして、男は怒りに任せ、母親のために買ったステーキ肉を流し台へ捨てようと台所へ向かい、手にしたのが包丁だった。
ベッドに倒れこんでいた母親に対し、男はその横にあるテーブルの上に包丁を置いて、次のように言い放った…
被告の男: はよ死ねや
この後、自分の部屋へ戻った男は、もう一度酒を飲み、意識を失うように眠りについたと言う。 午前9時頃。目を覚ました男は、母親の様子を見に寝室へと向かった。しかし、そこに母親の姿は無かった。
被告の男: まさか
男は納屋へと向かうと、そこにあったのは、ロープで首を吊った母親の姿だった。「まさか」と思った理由については男は…
被告の男: 7年前に父親も納屋で首を吊って自殺していたのでそう思った。
と証言している。 その後、男は弟に母親が亡くなったと連絡したが、弟は、兄が酒に酔っていたため本当だとは思わなかったという。その後、会社の上司にも…
被告の男: お母さん死んだんや、俺が殺したみたいなもんや。死ねって言ったらほんとに死んだ。
と連絡したと言う。その電話を受けた上司が警察に通報し事件が発覚。 男は取調段階での検察の質問に対し、こう答えていたと言う。
被告の男: 子どものころ楽しみだったのは土曜日に食べる母親のカレー。父と母は必ず毎週日曜日はパチンコへ行き、自分は、お腹を空かせてその帰りを待っていた。パチンコから帰って来ても充実した食事は作ってもらえず、仕事終わりにも料理を作ってくれないことが多かった。母親に対して良い思い出はあるが悪い思い出の方が多い。そんな中でも、母親のカレーを食べながらテレビを見るのが楽しかった。母親の作るカレーが一番好きだ
事件当時、酒に酔っていた男。酒を飲むと人が変わったように怒りっぽくなり、理性を失ってしまうと言う。しかし、これまで母親に対して暴力を振るったことはなく、今回の件について…
被告の男: 本気で怒っとるんやぞというのを分かってもらいたい部分があった。強く母親の死を思ったことはない。
さらに…こう続けた
被告の男: いなくなってほしいと思ったことはなく、ずっと一緒にいたかった。本当に自殺させるつもりはなかった。
検察は被告の犯行は母親に自殺を決意させる具体的なもので、暴行についても悪質で厳しい非難に値するとして懲役3年を求刑した。 弁護側は、「はよ死ねや」の一言で執拗に自殺を迫ったわけではなく、被告の暴力や暴言が酒に酔った突発的なもので、深く反省しているとして、執行猶予付きの判決を求めた。 男は最後、法廷で次のように語った。
被告の男: 母親が亡くなったことへの寂しさと、自分がやってしまったことへの怖さを感じた。もう二度と酒は飲まない。
判決公判…裁判所の判断は
12月5日に開かれた判決公判 金沢地裁の裁判官は…
裁判官: 犯行動機はあまりにも幼稚、かつ自己中心的だ。一方、被告も事実を認め反省の態度と更生の意欲を示している
このように述べ、懲役3年、執行猶予5年、保護観察付きとする判決を言い渡した。 裁判官の言葉に何度もうなずいていた男。最後に裁判官が「二度と犯罪をしないでください」と述べると、「はい」と誓っていた。 母親が作ったカレーへの執着と酒癖の悪さが引き起こした今回の事件。酒を断ち、人生をやり直すことになっても、そこには母親の姿も母親のカレーもない。
石川テレビ
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