パチンコ店敷地内でコーヒーレディを刺し傷害罪で4年6カ月の服役後、犯罪を繰り返した男の裁判…

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2023年9月、石川県白山市のホテルで当時23歳の女性が刃物で殺害された事件。逮捕から1年あまり、先日、裁判員裁判が開かれ、男には懲役30年の判決が言い渡された。この裁判で明らかになったのは被告の男が以前から抱いていた殺人への憧れだった。

2024年11月7日、金沢地方裁判所。84席ある椅子のほとんどが埋まった法廷に黒いスーツで、青いネクタイを締めた男が大股で急くように入ってきた。

白山市の無職、中村信之被告55歳。

2023年9月11日、石川県白山市のホテルで、初対面の女性(当時23)を刃物で刺して殺害したとして殺人などの罪に問われている。

起訴内容に間違いがないか裁判長が問おうとすると…

中村被告:
間違いありません。
裁判長:
いずれの事実も間違いないですか?
中村被告:
全て間違いありません。

中村被告は裁判長の言葉を遮るように、ハッキリした声で起訴内容を全て認めた。

まず明らかとなったのは中村被告の動機。

検察は法廷で「中村被告は仕事も金もなくなって自暴自棄になり、以前から持っていた”人を殺したい”という願望を果たそうと考えた」と指摘。

二十歳ごろから持っていた「人を殺したい」という殺人願望。人を刺したら面白いんじゃないか、との思いから妄想や幻想を繰り返していたという。中村被告は法廷でこう述べている。「若い女を殺したいとか、気にいらない奴をバッドで殴りたいというのがあった」

その対象の多くは「若い女性」。背が高く美しい、アナウンサーのような女性を見ると「車に引きずり込んで乱暴した後、首を絞めて殺したい。山に連れていって埋めたい」と思っていたそうだ。

続いて明かされたのは、犯行当日まで中村被告がどう生きてきたか。

事件の約10カ月前、中村被告が生活していたのは刑務所の中だった。

2016年、パチンコ店敷地内のゴミ捨て場でコーヒーレディの女性を刺し、2022年11月24日までの4年6カ月、傷害罪で服役していた。その前には実の妹の首を絞めて殺そうとした殺人未遂の罪でも服役。中村被告には前科11犯の犯罪歴があり、そのうち2つは女性を攻撃したものだった。

傷害罪での服役を終え、能美市内の鉄工所で働き始めた中村被告。その時の心境を次のように述べていた。「仕事が決まってとりあえずホッとしました。人生をやり直すというよりも生活をしていけるのかという不安が大きかったので、それが解消されるという気持ちが大きかった」

この鉄工所で作ったのが今回、女性を刺した刃物だった。全長29センチ、刃体は18.8センチで、鉄工所の機械を使って家にあった鉄やすりを削って作ったという。切れ味は冷凍した鶏肉を切って確かめていた。

中村被告はその自作の刃物を段ボールの鞘に入れて持ち歩いていたという。その理由は「未完成だったので、会社に置いておくわけにもいかなかったから」だったという。これ以外にも中村被告は100本ほどの刃物を自作していたと言う。

事件10日前。中村被告は仕事を無断欠勤した。欠勤の理由は「酒を飲みすぎた」ことによる寝坊。その勤務態度について鉄工所の工場長はこう話している。「仕事中は一生懸命で真面目だった。でも遅刻は頻繁にしていて、無断欠勤もあった。勤務姿勢には不信感を持っていた。出勤してきたときに酒臭かったことがある」

毎日ウイスキーや500ミリのストロング缶を3本ほど、多い時に5~6本は飲んでいたという中村被告。自身がアルコール依存症予備軍であると自覚していたようだ。その後も無断欠勤を続けていた中村被告だったが、勤務先から「保険証を返すように」という旨の留守電が入っていることに気が付き、解雇されたと思い込む。

失職し、将来が見えなくなったことで自暴自棄になった中村被告。パチスロや飲食ゲームの課金に風俗代など2日間にわたり散財した結果、残高は237円に。中村被告に残ったのは自作の刃物だけとなった。これが中村被告の妄想を現実にするきっかけとなる。

事件2日前。9月9日午後11時ごろ。

中村被告は白山市内のインターネットカフェに24時間パックで入店。このときもリュックには自作の刃物を入れていた。翌日、9月10日午後9時40分ごろ。店から退店しようとするが所持金が足りず、近くのパチンコ店に併設されたコンビニのATMで引き落とそうとした。

しかし残高が237円だったため金は下ろさずにそのパチンコ店内を徘徊。なぜ徘徊したのか?という問いに…「殺せる相手を探していた可能性がある」そのパチンコ店で殺せる相手は見つからなかったが、衝動は止まらなかった。

中村被告:
「9月1日に別のパチンコ店に行った。調子の良いことを言っていた幹部店員がいて、あいつどないかしたろうかなという思いでそこへ向かった」
弁護人:
「どないかしたろうかな、というのは?」
中村被告:
「殺すという意味です」
弁護人:
「前は痛い目にあわせようと思った、殺すまでは思ってないと言っていたけど、殺意があった?」
中村被告:
「あったとも言えるし、なかったとも言える」

気に入らない店員を殺そうと、あるいは痛い目に合わせてやろうと別のパチンコ店へ向かった中村被告。その店員を店内で見つけることは出来ず、30分以上駐車場で待ち伏せていたというがそれでも店員は現れなかった。そこでよぎったのが「若い女性を、ホテルで殺す」という恐ろしい考えだった。

中村被告は法廷で、「どうせやるなら確実に殺したいと、ホテルなら確実に殺せるだろうと思った」と話している。これに対し検察が、なぜ確実に殺せると思った?と尋ねると中村被告は、「密室で助けも呼べないからだ」と答えていた。

殺害した女性の財布からホテル代を精算
9月10日午後11時36分。中村被告は、事件現場となるホテルに入店。

”相手の死角で、すぐに取り出せる場所”

その考えから刃物はソファーのひじ掛けあたりに隠し、到着した女性を招き入れるとソファーに座らせた。刃物を隠したのとは反対の、出入口から遠い方へ。

そして女性が中村被告の方へ体を向けた瞬間…

中村被告:
立ち上がって刃物でいきなり刺しました。下腹部あたりだった。
検察:
その時の力は?
中村被告:
フルパワーです。

女性の下腹部を2~3回刺した中村被告。ソファーから立ち上がり、悲鳴を上げて逃げようとする女性を追いかけ、背面から襲った。中村被告はその時の様子について、「何度も刺しました。そんなムチャクチャに刺した覚えはないですけど、馬乗りに近いと思います。みぞおちから心臓があるところに向かって深く、2~3回刺しました」と、すらすらと話していた。

弁護人がどれだけ刺したのかと問うと、中村被告は、「1回目、2回目かは覚えてないけど、刃物の根元近くまで刺しました」さらに、「女性の口元が痙攣していたため、まだ生きていると思ったので、深く刺した。力いっぱい、プラスえぐりました。ぐりぐりと。そのあと動きが無くなったので死んだと確信した」と犯行時の様子を答えていた。女性の体には30カ所以上の傷があり、腕には多数の防御創も残っていた。

そして女性を殺した中村被告は信じられない行動に出る。

中村被告は、女性に口づけをしたり、胸を触ったり、下着を刃物で切って性交しようとしたという。これについて中村被告は「異様な興奮状態で、高揚した気分だった」と述べている。人殺しという行為にえもいわれぬ高ぶりを感じたと言うのだ。そして中村被告は、体や刃物についた血を洗い流し、女性が持っていた現金1万9000円を抜き取った。

さらには、自分が刺して殺した女性を写真に収めていたと言うのだ。

弁護人に、なぜ写真を撮ったのかと聞かれ「分からないけど、こんなことを言ったら不謹慎だけど、犯罪者は自分のした行いを記念に撮っておきたいと考えると思う。そういう心境で撮ったんだと思う」と答えた中村被告。弁護人に、それは今のあなたの推測ですよね?とさらに問われると「いや、記念に撮っておこうという気持ちがありました」と答えていた。

犯行後、中村被告は、女性から抜き取った金でホテル代を清算。その後、自転車で向かった先は石川県内一の繁華街、金沢市・片町だった。

女性を刺した刃物はリュックではなくズボンのベルトに差し込んでいた中村被告。「また人を殺そうとしていたから、いつでも取り出せるように」だったという。人が多く集まる場所へ行けば殺人のチャンスが増えると思った中村被告。人を殺す快感をもっと味わいたいと再び殺す相手を探していたのだ。

ここでもターゲットに選んだのは「若い女性」

午前4時過ぎには2人の女性とベンチに座って話す中村被告の姿が防犯カメラに記録されていた。しかし、女性たちの命は奪わなかった。

中村被告は2人いたので、いっぺんには殺せないかなと、それと酒にひどく酔っていたので殺せなかったと述べていた。女性たちと会話し、そのままベンチで眠った中村被告。その約3時間後、警察官が身柄を確保し銃刀法違反の現行犯で逮捕。殺人の疑いで再逮捕された。

「人を殺してみたかった」という身勝手な思いから突然命を奪われた女性。その調書には娘を失った悲痛な思いが綴られていた。

被害者の母:
 私はA(被害者)の母です。事件から3か月経った今でも娘が帰ってくるのではと、しかし、帰ってこない現実を受け入れている毎日です。
 娘は元夫との間に生まれた長女で、福岡県で生まれました。娘には3歳年上の長男がいます。元夫の不規則な勤務状態からすれ違い、離婚しました。平成26年8月に親権が私に認められ、3人での生活を始めました。当時子どもたちは高校生や中学生だったので、急に名前が変わるのはかわいそうだと、旧姓に戻すことはしませんでした。そのあと息子は神奈川県内で仕事に就き、娘と2人で生活することになりました。娘は帝王切開で生まれ、看護師さんがお腹の上に乗せてくれたときに、なんて可愛いんだと感動したことを覚えています。病気もせず健康で、いつもニコニコしていました。性格は内弁慶で、人見知りで、人と打ち解けるまでに時間がかかりました。でも頑固なところもあり、苦い薬を飲まずにテーブルの下に隠れ、動かないこともありました。

 娘は親思いの優しい子でした。親が母だけになり寂しい思いをさせたこともあると思います。それでも『産んでくれてありがとう』と手紙をくれたりする優しい子でした。高校では保育科を卒業し、地元の饅頭屋さんで働き始めました。仕事内容が嫌になったのか半年でやめ、特産品の油揚げを作る会社に入りましたが、仕事が嫌になったのか無断欠勤をするようになり、髪を赤く染めたりするようになりました。令和3年の5月、友達の家に外泊して、会社を無断欠勤しました。会社から電話連絡があり、娘に腹が立ちました。娘はその日の午後7時半に何も言わずに帰ってきてそのまま寝ていました。また腹が立ち、無断外泊などを注意しました。娘は何も言わずに外へ出ていきました。言い過ぎたかなと思っていると30分ほどで娘が帰ってきました。お風呂に入って出て来た娘に『カレー食べる?』と聞くと食べると言いました。その後、『友達の家に泊る、2~3日で戻る』と言うので駅まで送りました。それが生前の娘を見た最後で、こんなことになるとは夢にも思いませんでした。それから数日が経っても娘が帰ってこず、電話もつながらず、ラインも未読スルーとなりました。令和3年7月、警察に捜索願を出しました。携帯ショップにも行き、GPSの位置情報が博多市で反応したので安心しました。それから半年くらい経ったころ既読がつき、誕生日に『元気?』と送ると『元気だよ』と返信がきました。

 そして令和5年9月、昼頃に警察が来て『娘が亡くなったかもしれない、石川県の警察から連絡があるので対応してほしい』と言われました。現実とは思えませんでしたが、すぐに石川県に向かいました。『犯人に殺害された』と言われ、間違いであってほしいと思いました。霊安室で顔を見てすぐに娘だと思いました。やっと会えた、と全身の力が抜け、涙が止まりませんでした。刺されて傷だらけだと思っていたのですが、警察の方が綺麗にしてくれていたので、娘は眠っているようでした。ですが、話しかけても身動き一つしませんでした。刑事さんから『中村信之という男に刺された、そのショックで亡くなった』と聞きました。男性に刺され、息絶える中でどんなに苦しい思いをしたか、怖かっただろうかと娘が不憫です。なぜ娘は人生を奪われなければならなかったのでしょうか。娘はまだ若く、これから結婚して、子供を産んでいたと思います。23歳で理不尽に人生を奪われ、私が力づくても制止していればと後悔しています。娘を返してほしい。私の一生の宝を奪ったことは絶対に許せません。厳しい処罰を下すようお願いします」

殺人願望を果たした中村被告。取り調べの中で「反省も後悔もしていない。強いて言えば被害者はかわいそうだと思う」と話していた。中村被告はこう述べている。「人を殺してさっぱり、スッキリしたという気持ちと、罪悪感をはかりにかけたら、スッキリした方が大きいように思う。だから後悔というものがないという話になる」裁判中も一貫して後悔はないと話す中村被告。

中村被告の精神鑑定を行った医師の証言によると事件当時の被告には「完全責任能力があった」という。同時に2つの精神障害を抱えていることが分かった。

一つは「反社会性パーソナリティ」社会の規則や法律を守らず良心の呵責が欠如していて、他人を傷つけることなどに罪悪感を持たない障害である。

小学校3年生の時から万引きに手を染めていた中村被告。小学校高学年のときには同級生をコンパスで刺し、中学生になると仲間をバットで殴ったという。こうした幼少期からの暴力行為は反社会性パーソナリティの兆候だと医師は話した。

そして、もう一つは「性的サディズム」他者に対し、身体的・心理的な苦痛を与えることで強烈な性的興奮を覚える障害だ。

「普通に性行為しても満足せず、相手が苦しむ姿を見ると興奮する。相手を引きずり回したり、首を絞めて殺さないでと言われたり。相手を支配下に置きたい思いがある。逆らわれないように、言うことを聞かせるには暴力が一番いい」と医師に話したという。

「支配」や「暴力」。そして「人を殺したい」という願望。それについて中村被告はこう話した。

中村被告:
抽象的だけど、心の中に魔物を飼っている感覚がある。コンプレックスや、上手くいかない自分への苛立ち、破壊衝動や願望、そうした中に殺人願望が含まれている。

検察に「今後も人を殺してしまう可能性があるということですか?」と問われると中村被告は…

中村被告:
(今後も人を殺してしまう可能性は)あると思います。

今回、法廷には証人がもう一人出廷した。前回の事件で中村被告を弁護した弁護士だ。事件のあと、中村被告から接見したいとの要望があったという。

前回の事件を担当した弁護士は「本人は出所後、自分なりに一生懸命頑張ってきたつもりだったけど、自分の中には魔物がいて、他人に抱いているコンプレックスが大きくなって、世間に恨みのような感情が出てきて、それが大きくなって爆発したと」と証言。弁護人が前回のときと様子は違ったか尋ねると、「話し方や態度は変わらないが、このような事件を起こして、重大な結果を残して、この先の自分の人生を考えるべきではないという様子だった」と言う。また、中村被告はこの弁護士に「私は人間として大切なものをなくしてしまった。人を殺すのは自分を殺すことと一緒だ」と手紙を送っていたと言うのだ。

これについて中村被告は、「人間性といったものですかね、事件への反省も後悔もないし、普通はするのにそれが出てこないというのは大事なものがなくなったという意味合いです」と答えている。中村被告は、「被害者の可能性をゼロにした以上、自分の可能性もないと考えたので、これから先のことは考えたくないという思い」と述べ、被害者に対し、今何を思うか尋ねると…

中村被告:
かわいそうなことをしたと思っています。遺族の苦しみはこの先も続くわけで、それを考えるとかわいそうだなと思います。

被害者と遺族がかわいそうだと話した。その思いを遺族に対してしたためたであろう手紙。

中村被告が被害者遺族へ宛てた手紙(2024年5月12日):
 今更このような手紙を書いて良いのだろうか、ご遺族に不愉快な思いをさせるのじゃないかと思いながら書いています。手紙を書くのが遅くなったことをお詫びします。もっと早く書くべきだったと思います。申し訳ありません。
 私がやったことに弁解の余地などなく、冷酷で残酷なことをしました。Aさん(被害者)に全く落ち度はありません。申し訳ありません。Aさんの今後の可能性をゼロにした罪と責任は重大で、どのような罰も受けるつもりで、正直に話すつもりです。亡くなった命は戻ってきません。しかし、だからといって知らん顔をしているのは間違っていると思い、手紙を書くことにしました。
 ご遺族の私に対する怒りや苦しみ、娘さんを失った悲しみ、悔しさは大きいと思います。Aさんの苦痛や無念は想像を絶するもので、私が死刑になっても納得できることはないと思います。どんな言葉を持ってしてもお詫びのしようもありません。本当に申し訳ありませんでした。

手紙を書いたのは2024年5月12日、この手紙を弁護人に渡してきたのは9月だったという。なぜ4カ月、時間が空いたのか。これについて法廷で中村被告は、「書いた手紙を読み返して絶望したというか、意味ねぇもん書いたなという思いが強かった。意味のないものを表に出すつもりがなかった」と答えた。ではなぜ手紙を出そうと思ったのか。中村被告は、前回の弁護人に書いたのなら出した方がいいと言われたからだと答えていた。

手紙の写しを手にした遺族。代理人を通してその心境を語った。

遺族の代理人:
 今回の問題は被告人の罪を軽くすることです。被告人は自分で謝罪文を書いていて、存外内容もしっかり書けているが、本人が言っているように被害者には何の意味もありません。被害者のお母様もその写しを手にされたが、なぜこんな事件を起こしたのかという疑問が堂々巡りしています。
 前回の出所後、社会復帰をしようとしたというがそれは刑の軽減にはならない。被告は若い時から抱いていた殺人衝動を、幻聴などによるものでなく、自分の意思でその妄想を実現した。
 自暴自棄になったという動機は誰にでもあることです。今回の裁判では被害者の写真は一切出てこず、棒人間にされ、血痕の写真も白黒に加工されていました。これで本当に事件の残虐さが伝わったのでしょうか。被害者は普通の女の子でした。中村被告とは口論にすらなっていません。密室が都合良いという理由でたまたま選ばれただけです。
 被害者のお母様は娘が元気でいること、娘と会えることを楽しみにしていました。謝罪なんていらないから娘を返してほしいと言っています。被害者の将来を根こそぎ奪った罪の重さは量刑でしか示すことができません。次の被害者を出さないためにも、無期懲役をお願いします。

罪の重さを表す量刑。その罪の償い方を問われた中村被告は「どうなんでしょう、結果の重大性を考えると死刑もやむなしと考えています。命をもって償うというより死刑になっても仕方ないと。でも、死刑を望んでいるわけではないです」と答えていた。

裁判員裁判は3日間続いた。最終日、検察側は今回の事件は理不尽な動機による無差別殺人で、殺人罪の中でも特に悪質なものだと主張した。

さらに、仕事や金を失って自暴自棄になったことは被告の責任で、殺人願望を抱いていたことも被害者には関係がなく、殺される理由はない。被告は自作した刃物で冷凍肉を切り、切れ味も認識していた。その刃物で被害者をめった刺しにする、極めて執拗で残虐な犯行である。殺害したあとに写真撮影するなど、死者に鞭を打つような行為で尊厳を傷つけた。さらに、被告は多数の前科を持っており法を守ろうという意識が著しく希薄であること。人を殺したいという願望を果たそうと躊躇なく犯行に及んでいること。裁判においても「また人を殺してしまう可能性が高い」と話していることから再犯の可能性が高いと指摘した。

しかし…、罪を自白したこと、遺族に一応の謝罪の意思を示したことを考慮すると無期懲役を求めるのは若干の躊躇がある、として有期の懲役刑では最も重い懲役30年を求刑した。

一方の弁護側。被告は犯行直後「反省はないし、後悔もない。被害者に思うところはない」と話していたが、遺族に対して何もしないのは間違っていると謝罪し、被告なりに反省を深めつつあると主張した。

再犯の可能性について弁護人は、「本人が自覚しているかどうかは別だが、相当程度の後悔をしている。心に飼っている魔物が消えていないと言いつつ、もう人を殺したくないとも言っている。被告にはいまだ良心が存在していて、その葛藤がみられる。口では反省をしていないと言っていても現実には後悔が見える行動を取っている。多数の前科があると言っても同じことを繰り返しているわけではなく、再犯の可能性があるとはいえない」と養護した。そして、殺人への衝動性を克服し飲酒も絶つと言っていることから更生の余地が十分にあるとして懲役20年の判決を求めた。

最後、裁判長から何か言いたいことはありますか?と問われた中村被告。

中村被告:
あの……当然のことなんですが、私も人間なので親がいます。母親からは事件を知ってものすごくショックを受けたと言われました。でも私が生まれた時に本当に嬉しかったこと、楽しかったことは忘れないと、あなたを見捨てることはないと言われました。冒頭陳述でAさんのご遺族がAさんが生まれた時に嬉しかったと述べられていて、本当にかわいそうだなと思いました。以上です。

判決まであと2日となった11月18日。石川テレビは中村被告が勾留されている金沢刑務所へと向かった。

午前9時15分ごろ、黒のジャケットにYシャツを着て現れた中村被告。本来であれば本読みや、入浴をしている時間だという。

記者が判決を待つ今の気持ちを尋ねると、中村被告は、「率直に言って明日という日を与えられたことに戸惑っている」なぜ戸惑っているのかとさらに問うと、「人の命を奪っている以上、死刑でもやむを得ない。求刑が無期懲役、死刑というものであっても仕方ないのに、そこに30年の有期刑がきて戸惑っている」と答えた。

さらに「犯した罪は終わらないけど、罰に終わりがある。それでも失われた命は戻らないわけで、戸惑っている」と言うのだ。冷静に、落ち着いた口調で答えた中村被告だったが、有期懲役の求刑を受け「弁護士とは何か話したのか?」と問いかけると、態度が一変した。「それは言う必要がない。そもそもマスコミは野次馬ですから、誤解をしないように。俺は今我慢しているので。なぜ勝手に書かれたり報道されないといけないのかと我慢している。なぜなら、被害者に対して失礼だからです。俺にも家族がいる。俺には俺の思いがあるし、ズカズカと土足で入られるのは気分が悪い。裁判でも最前列に座ってなんなんだと思っている」

記者が、人を殺めれば、結果的に報道されることになると思っていなかったのか?と問うと、「私がそんなことを考えることはない。マスコミが勝手に集まってきているだけ。俺は前科がたくさんあって、覚醒剤もある。注目度かなんか知らないけど、なぜこういう事件になったら騒ぎ出すのかなと」これに対し「人の命が奪われているからです。」と述べると中村被告は、「犯罪は犯罪で同じだから。ガチャガチャやられるのは迷惑なんです。でも結審するまではやっぱり法廷で被害者に誠実にしたいと思って、こういうことを言うのは差し控えていた。こっちにはこっちの事情がある。くだらない。覚せい剤をやった時、ICカードを盗んだ時にもこうやって聞きにくればよかったじゃない。そのときは全然スルーだよ。事件を選んでいるんです。こういう事件を起こすと集まってくることに矛盾を感じて腹が立つ。そこを理解して話をしてほしい」と答えた。

記者が、覚醒剤と殺人では関心が違います。それは世間一般の人も同じだと思うが?と指摘すると中村被告は、「関心を持たれても、他人だから。あなたが遺族なら、私の家族や上司なら事件に関心があって、ふざけんな、どうして?と聞きに来るのは分かる。でもあなた個人として関係ないでしょ。あなたの家族がお亡くなりになったの?違うよね、勘違いしないでね」強い口調で、「マスコミの姿勢が腹立たしい」と語っていた。

裁判で「また人を殺してしまう可能性がある」と話したことについて、今の心境を尋ねると「被害者を殺めた後の自分の行動や精神状態から持続しているもの、変化したものがあって難しい。人間は変わっていくものだし、今はこうですと断言できない。ないと言えばないし、あると言えばあるというフワッとしたことしか言えない。一日一日一生懸命にやらなきゃという気持ちはある」と述べ、明日を一生懸命に生きていくことで罪の重さを実感することができると語っていた。

最後に「もしも事件当日に戻れたらどうするか?」と問いかけた。

中村被告:
家に帰って寝てますよ。

11月20日。中村被告への判決が言い渡された。

金沢地裁 野村充裁判長:
主文、被告人を懲役30年に処する。

まっすぐに前を見つめ、裁判長の言葉を静かに聞く中村被告。「内容は分かりましたか?」という問いに「はい」と答えた。

裁判長は「動機はあまりに身勝手かつ理不尽なもので被害者の尊厳を一顧だにしない態度が見て取れる。犯行の背景に反社会性パーソナリティ障害や性的サディズム障害の影響が多少伺えるにしても、酌むには限度があり、前刑執行終了後、10カ月足らずで今回の犯行に及んだ意思決定は強い非難に値すると断罪した。その上で「何ら落ち度のない被害者の尊い命が奪われた結果は重大で、同種事案の中でも特に重い部類に位置づけられる」として検察の求刑通り懲役30年の判決を言い渡した。

裁判長が、説明はわかりましたか?と訪ねると中村被告は、「はい」と、はっきりと、うなずきながら返事をしていた。そして、裁判長から「被害者や遺族、その親しい人の無念を忘れず、一生かけて罪を償っていってもらいたい」と諭されると、静かに、ただまっすぐ前を見つめていた。

(石川テレビ)

石川テレビ(2024年11月24日)

パチンコ事件がトマラナイ・・・↓↓↓

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