米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の通訳を務めた水原一平被告の違法賭博問題でも注目され、誰もがなりうる精神疾患として知られるギャンブル依存症。滋賀では、県立精神医療センター(草津市)が専門の医療機関として集団治療などに取り組んでいる。近年はボートレース(競艇)など公営ギャンブルへの依存が増えているといい、医師は「まずは病気があることを理解し、専門機関や自助グループにつながって」と呼びかけている。
ギャンブル依存症はパチンコや競馬などにのめり込み、生活や人間関係に問題が出てもやめられない状態を指す。賭けができないと怒りっぽくなる、うそをつく、巨額の借金をするなど周囲に悪影響を与える例が多く、国や自治体が回復支援に力を入れている。
同センターによると、以前はパチンコ依存の相談が多かったものの、患者41人を対象にした2023年度の集計では、公営ギャンブルが最多の約6割占めた。特にスマートフォンで競馬に賭けるなど、オンラインで熱中する人が増えているという。
集計では患者の9割超が男性で、初診時に中央値で600万円の借金を抱えていた。精神科部長の濱川浩医師は「借金が大きくなるほど『ギャンブルでしか返せない』と思い込み、悪循環に陥ってしまう。負債を抱え、配偶者や親に連れられて受診する人が多い」と明かす。うそや借金を重ねることから、家族も本人を信用することができず、苦悩を抱えてしまうという。
ギャンブル依存症の治療では、うつ病を抱えている患者などを除けば投薬はせず、外来集団治療プログラムで回復を目指す。センターでは患者約10人が参加するグループワークを月1回開き、ギャンブルのメリットとデメリットを書き出したり、依存体験を話し合ったりする。ワークを通じて本人自身が病気を理解し、刺激を避ける行動を取ることで、次第にギャンブルから離れられるケースが多いという。
濱川医師は「もうどうしようもないと思って受診や相談へ踏み出せた人は回復しやすい。病院に抵抗があるなら、県立精神保健福祉センターや県内の自助グループに相談して」と話している。
「教育で依存症伝えて」悩む家族の声
ギャンブル依存症は本人の家族や友人にも悪影響を及ぼすが、巨額の借金で追い詰められていない場合は、専門機関に相談せず抱え込むケースも多い。夫のパチンコ依存に30年以上も悩む県内の60代女性は「本人が自覚しなければ治らない精神の病。夫婦どちらかが死ぬまでは苦しみが続く」と吐露する。
女性の夫は結婚当初からパチンコに熱中し、残業と偽って遊んでくるほどだった。子育て中の30代の頃から次第にエスカレートし、休日は数時間も店に入り浸るように。裕福な生活ではなかったが、毎月数万円がパチンコ代に消えていった。
女性が今も忘れられないのが、長女の次に授かった子を死産した時のことだ。胎児の処置手術を受けて全身麻酔から覚めると、待機しているはずの夫と長女の姿が消えていた。もうろうとしながら長いすで待ち、現れた夫に行き先を尋ねると「パチンコ」。あまりの衝撃で言葉が出なかった。
その後も3人の子を育てる多忙な日々の中、パチンコを巡る夫婦げんかが絶えなかった。パチンコ店に行くのを止めると夫はイライラし、衝動が収まらない様子。ただ借金はせず、子煩悩の良い父親でもあった。親族には「頑張って働いてるんやし、パチンコくらいええんちゃうの」とあしらわれ、苦しみを理解してくれる人はいなかった。
依存症の特徴に夫が当てはまると気づいたのは50代になってからだが、「本人の自覚がない限りは治らない」と女性はうつむく。「ギャンブル依存症は心に闇を作り出す魔物。大人になってからでは遅いので、義務教育で少しの時間でもいいから依存症のことを子どもたちに教えてほしい」と語気を強めた。
京都新聞(2024年6月19日)
厚生労働省が調査したデータを基にすると、国内のギャンブル依存症者は推計320万人ともいわれています。当事者のみならず家族や友人なども巻き込んだりするケースが多く、その数を含めれば1千万人以上の人がこの病気に悩まされることにもなります。
過去から現在までの累計数でいえば数千万人はくだらないと言えます。
「ギャンブル依存症は心に闇を作り出す魔物。大人になってからでは遅いので、義務教育で少しの時間でもいいから依存症のことを子どもたちに教えてほしい」
という言葉は全くもって賛成です。
世界に類をみないギャンブル大国にあって、「そのリスク」を事前に告知しないことはアンフェアであり、消費者保護の観点からいっても問題なのではないでしょうか…。
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