2023年12月12日、毎日新聞の報道です。
ギャンブル依存症からの脱却を目指す自助グループなどが主催する講演会が9日、福岡県中間市のなかまハーモニーホールであった。同市在住の作家で精神科医の帚木(ははきぎ)蓬生(ほうせい)さん(76)がギャンブル依存の危険性について語り、約300人が耳を傾けた。【山下智恵】
帚木さんはギャンブル依存症患者の治療に尽力し、関連著書も多い。間もなく刊行される紫式部を主人公にした小説「香子(かおるこ)」(PHP出版)にちなみ「源氏物語におけるゲームと賭博」と題して講演。源氏物語が書かれた当時のギャンブル「双六(すごろく)」が「悪行に走り、孝道に欠け、職を失う」との理由で繰り返し禁令が出た歴史を紹介した。
また、競馬や競艇などの公営ギャンブルやパチンコ店が身近にあふれ、自治体がカジノを誘致しようとしている現状に触れ「かつて為政者はギャンブルを禁止してきたのに、現代では『やれやれ』とけしかける恐ろしい時代だ」と批判した。
その上で「依存症患者は借金を重ねると朝から晩までうそをつく。それが本人にとっても苦しい。自助グループで思いやり、正直、寛容さを学ぶことが重要」と自助グループへの参加を呼びかけた。当事者の周囲の人には「手助けをしないこと。借金の尻拭いはせず、関わり方を学習する必要がある」と述べ、家族会に参加することを勧めた。
講演前には依存症当事者や家族10人が登壇。当事者は、借金を重ねて家族離散や犯罪に手を染めた経験を語り「負けたらどうなるかという結末を思い描けなくなる」「勝っても、もっと勝てば良いとギャンブルにつぎ込んで借金を繰り返した」と振り返った。
自助グループ「北九州無限会」を主催する三好将夫さんは「依存症は薬で治らず、一人では回復もしない。しでかしたことと向き合う勇気を持って経験を分かち合うことで、仲間と共に回復していく病気だ」と話した。
ギャンブルやアルコールなどの依存症の相談は、北九州市立精神保健福祉センター(093・522・8729)。
◇ギャンブル依存症
賭け事にのめり込み、衝動を抑制できなくなる精神疾患。高額な借金や家族関係の悪化などのトラブルを引き起こすケースも。2020年の厚生労働省の調査では、過去1年間にギャンブル依存が疑われる人は全体の2・2%(男性は3・7%)。誰もがなり得る病気だが、自己責任という誤った認識を持つ人が7割強に上るなど理解が進んでいない。
毎日新聞
帚木蓬生(ハハキギ・ホウセイ)
1947(昭和22)年、福岡県生れ。
東京大学仏文科卒業後、TBSに勤務。2年で退職し、九州大学医学部に学ぶ。
2023年8月現在は精神科医。
1993(平成5)年『三たびの海峡』で吉川英治文学新人賞、1995年『閉鎖病棟』で山本周五郎賞、1997年『逃亡』で柴田錬三郎賞、2010年『水神』で新田次郎文学賞、2011年『ソルハ』で小学館児童出版文化賞、2012年『蠅の帝国』『蛍の航跡』の二部作で日本医療小説大賞、2013年『日御子』で歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』で吉川英治文学賞と中山義秀文学賞をそれぞれ受賞。
『国銅』『風花病棟』『天に星 地に花』『受難』『悲素』『襲来』『花散る里の病棟』といった小説のほか、新書、選書、児童書などにも多くの著作がある。
まとめ
メディアでギャンブル依存症についての記事を目にする度に救われるような気持ちになります。
ギャンブル依存症のリスクを事前に説明されない中、パチンコ・パチスロなど気軽に出来てしまう国内の環境には疑問を感じざるを得ません。
特に、パチンコ・パチスロは公営ギャンブルでもない、国内で唯一暗黙に許されている不可解なギャンブルです。
ギャンブル依存症についての理解が広く国民に浸透することを願ってやみません。
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